そっと伸ばした手の先。

今思えば、その距離は凄く近かったのかもしれない。


あのときは何も考えてなかった。

あのときは何も頼まないつもりだった。




でも、これは『取引』。




今まで引き延ばしにしてきたんだから

少しぐらい、自分勝手な頼み事でも、良いよね・・・?










D E A L I N G










目を覚ました時、視界を覆うのは白。
漂ってくる薬品の匂いに、そこが医務室だと知ってゆっくりと瞬きを繰り返しながら、どうしてここにいるのかを思い出す。

ルックの部屋を飛び出して、シーナにぶつかって、・・・そこで記憶が途切れる。

思い出すシーナの顔は真剣で、解放戦争以前の頃のシーナを思わせる。
だから、必死に手を伸ばして。
伝えたいことがあった。
けれど、それがちゃんと言葉に出来ていたのかは解らない。
ちゃんと声に出ていたのかは解らない。
ちゃんとシーナに伝えられたのかは解らない。

熱に浮かされた瞳は潤んでいたのか、記憶にあるシーナの顔は時々滲んでしまって表情がよくわからない。
けれど、もし伝えられていたのなら。

驚いたのだろうか。
それとも笑ってくれただろうか。
それとも、―――馬鹿らしいと、嘲笑っただろうか。


そう考えて、ティルはそんな自分の考えに苦笑いする。

上半身を起こすと、額に載せられていたらしいタオルが布団に落ちる。
それを手に取り、ベッドを降り、ベッドを囲んでいるカーテンを開ける。
けれど、軍医は今席を外しているらしく、医務室だというのに人の気配は殆ど感じられない。

ティルは辺りを見回し、メモのような紙を見つけると、そこに一筆お礼だけを書いて医務室を出る。

医務室の外に出て、薬品の匂いのない空気を肺いっぱい吸い込んで、ゆっくりと吐き出す。
未だ本調子とは呼べないけれど、少し寝たせいか体調の方は良くなったらしい。

階段を上りながらそんなことを考え、何処かの窓が開いているのか、時折廊下に吹く冷たい風に、思わず喉元の服を引き寄せる。
ティルはそこで漸く気付いた。
自分の首元が開かれていたことを。

普通寝ている人間は寛げるような格好で眠る。
結っている髪を解いたり、首元を開いたり。

けれど、良く身体を動かすティルは、少しでも動きやすいようにと、詰め襟は閉めず、ゆったりとした着方をする。
けれど、今日は違った。
首元は隠さなければならなかったからだ。

今は結われていないティルの黒髪で隠れてしまっている。
けれど、詰め襟はルックによって開かれてしまった。その後、ティルはそれを閉じるまもなく部屋を飛び出し、シーナとぶつかった。おそらくティルを休ませようとした誰かに見られてしまっているだろう。
もしそうなら、その人物はティルの隠したものを見たことになる。

首筋に着けられた、赤い痕を。


ティルは首元を、ほんの少し呼吸が苦しくなるほどきつく握りしめ、そのまま部屋まで駆けだした。
幸いなことに、その姿を見た人は、誰一人としていなかった。






+ + + + +






窓の縁に寄りかかりながら腰掛け、膝元に本を開いたまま置きながら、ティルは月を見上げる。

それは考え事をするティルの癖であった。
開かれた窓から入ってくる風は心地よく、澄んだ空気を吸える。
白く浮かぶ月は、ティルの中の闇すらも照らしてくれている気がして、ティルは夜に月を見上げるのが好きだった。

そんな環境ならば良い考えが浮かぶのではないか、と解放戦争から実行していたことだった。


本当は考え事などせずに寝るべきなのだろう。
今日昼間身体を休めたとはいえ、それは充分ではない。
そう考えても、ティルは決して眠る気にはなれなかった。

ティルのベッドには、シーツが敷かれていない。
昨日この部屋に案内されたとき、ベッドの上には洗濯され、畳まれたままのシーツが置かれていた。
けれど、そのシーツは今日ルックに渡した。正確に言うならば、『置いてきた』であるが。

代わりにティルのベッドの直ぐ側にシーツがある。
それは昨日、情事のあとティルがルックの部屋から持ってきたものだ。

ティルはそれをベッドに敷くつもりにはなれない。かといって洗い物として誰かに渡すわけにもいかなかった。
見る者が見れば解るからだ。

新しくシーツを借りる他ないだろう。
今手元にあるものは自分で処理すれば済む。


ティルが今考えているのは、別のことだった。


少し寒い風が吹き、ティルは胸元の服を握りしめる。
風に煽られた髪は揺れ、本の一瞬だけだけれど、ティルの首元は露わになる。




「・・・・・・僕、は」




―――この城から出るべきなのだろうか。

そう考えてティルは首を横に振る。

それはあまり良い行動とは言えない。
だって今は未だ信頼してくれている者が少ない。
このまま城から抜け出してしまったら、ハイランドの間者と思われてしまう。

だから、今、城から出るべきではない。それは解っている。


けれども。


思い浮かんだ翡翠の瞳。
その瞳が苦しそうに歪められた顔。
流れ落ちる涙。
何かに縋るような、何かを求めるような、そんな瞳。

なのに、その手を払いのけてしまった。


左手で左目を覆う。そして指の間を通る髪をくしゃりと握る。
掌の下に隠れた眉は顰められ、本の上に置かれた右手は強く握りしめる。
ぎり、と奥歯を噛みしめる。


―――なんて、愚かなのだろうか。

ティルが自分自身にそう悪態をつけようとして、扉が叩かれた。


コンコン・・・
と小さく叩かれた扉に、ティルは顔を上げ、窓の縁から降りる。
膝の上に置かれていた本が床に落ち、それを拾い、テーブルの上に載せてから扉に向かう。
その途中でもう一度小さく扉が叩かれた。
大きな音を立てないのは、ティルに遠慮しているからなのか、それとも『トランの英雄』に怯えている所為なのか。

ティルはため息を一つついてから扉を開く。




「あ、ティルさん。未だ起きて―――




扉の向こう側にいたのは、フェイだった。
けれど、フェイはティルの顔を見つめたまま、言葉を失ってしまった。
それは驚いているようにも見えて、ティルは首を傾げる。




「・・・フェイ?」

「え、・・・と、ティルさん、ですよね?」

「え?」

「髪・・・」




そこでティルはフェイの視線が自分の髪に移されたのを知り、肩を流れる髪に触れる。

そう言えば、フェイの前で髪を下ろしたことはなかったっけ?
と、思いながらも、それだけでフェイが言葉を失ってしまう理由がわからず、視線だけで疑問を投げかける。




「長くて、綺麗だったから・・・女の人かと・・・」




尻窄みになった言葉は、しかし直ぐ側にいたティルにはしっかり届いてしまった。

前半は未だ褒め言葉としてとれなくもないけれど、後半はなんと言葉を返したらいいものか。
中性的な顔や細い躯の所為で何度そう間違えられたことか。
おそらく両手を使っても足りないだろう。

ティルはほんの少し顔を赤らめたフェイに、苦笑いを浮かべる。




「それで、何か用があったんでしょ?」

「あ、はい。実は―――




フェイの言葉から出てきた言葉は、ティルの予想通りであり、予想外であった。
けれど、ティルは一瞬瞠目しただけで、直ぐにフェイに微笑んで二つ返事を返した。




「・・・解った。それじゃ、また明日」

「はい。・・・あ、ティルさん」




ティルの言葉にフェイは一度頷いて扉から離れようとする。
けれど、扉に背を向けた瞬間、何かを思い出したかのようにティルの方に振り返る。




「今日倒れたって、聞いたんですけれど・・・?」

「・・・誰に?」

「ホウアンさんです。同盟軍の軍医で、『運ばれてきた』と言っていたので・・・」

「誰に運ばれてきたのか、解る・・・?」

「そこまでは僕も知らないんですけど・・・本当なんですか?」

「・・・ちょっと体調を崩してしまってね。でも、今日一日ゆっくりしてたからもう大丈夫。今日は何も手伝ってあげられなかったけれど・・・明日はちゃんと行くから」

「・・・無理はしないでくださいね?」




フェイの心配そうな言葉に、ティルは頷きを返す。
ティルがしっかりと頷いたのを見届けてからフェイは踵を返し、今度こそティルの部屋の前から離れた。


ティルはフェイの背中が見えなくなってから扉を閉め、そのまま扉に寄りかかりため息を漏らす。

そして首筋に手を伸ばして、そっと触れる。




「・・・『わからない』、か・・・」




手の下にある赤い痕。
それを見てしまったかもしれない人物を、早く捜し出さないと。
そう考えながら、ティルは窓の側まで歩き、窓を閉める。




白く輝く月を、雲が暗闇の中に引きずり込もうとしていた。






+ + + + +






シーナは思わずその手首を握ってしまって、―――そして直ぐに後悔した。

長い袖に隠れたその手首は、掌と同じ真っ白な包帯で巻かれていた。
なのに、包帯の上から握っているというのに、その手首はまるで少女のように細い。

そんなシーナを、ティルは瞠目して、けれど黙ったまま見つめていた。
その瞳は一瞬怯えたように見えて、シーナはティルに気付かれない程度に瞳を鋭くさせる。




「何で、お前がここにいるんだよ」

「・・・フェイに頼まれたんだよ。『ミューズまで同行してくれ』って」

「そんな身体で、か?」

「・・・・・・それは、昨日、倒れたことを言ってるの?」




ティルの視線が鋭くなる。
この時のティルの瞳はまるで人の心を見透かしているよう。

シーナはティルが解放戦争の時、良くこんな鋭い瞳をしていたのを思い出す。
だからシーナはその瞳が嫌いだった。

そんなティルの瞳に、シーナは眉を顰め、右手でしっかりとティルの手を握りしめたまま、ティルの首元に左手を伸ばす。
シーナの手が首筋に触れた瞬間、ティルは身体を強ばらせる。




「・・・見られたくないのなら、つけさせなければいいだろ」

―――――っ・・・!?」




まるでティルを突き放すような冷たい声でシーナは言う。
それと同時に左手は離れ、ティルの手首を掴んでいた右手の力を緩める。
その隙を見てティルはシーナとの距離を離し、シーナが触れた首筋を、自分の手で押さえる。

シーナはそんなティルの姿を一瞥すると、直ぐに背を向けてしまう。
ティルは慌てて去っていこうとするシーナの後ろ姿に向かって声を掛けた。




「っ・・・待って!」

「・・・何?」




シーナは背を向けたまま、視線だけをティルに向ける。
けれど、そんなシーナの視線に慣れてしまったティルは唾を飲み込み、真っ直ぐにシーナを見つめる。




「昨日僕を医務室まで運んだのは、・・・シーナ?」




首筋を押さえたままのティルに、シーナは言葉を返さない。
只、ティルの首筋を見つめて、――首筋につけられたものを思い出して、ため息を吐き出す。




「さあな」




シーナが返した言葉はそれだけ。
そのまま視線を戻し、歩き出すシーナをティルは止めなかった。


ティルから少し離れたところで、シーナはもう一度ため息を吐き出す。
そして今ティルの手首を掴んだ右手を見つめる。




―――嫌いに、ならないで・・・―――




あのまま放っておくことなんて、出来ない。出来るはずがない。
病人を放っておく程、シーナは冷酷な人間じゃない。それが例え、嫌いな人間であっても。

けれど、医務室まで運んで、呼吸が辛そうだったから詰め襟を寛げたのは、ティルが嫌いじゃなかったから。




「・・・嫌いに、なれるかよ」




そう呟いて右手を握りしめる。
強く握りしめた手に、爪が食い込む。




名前が呼びにくいから、と愛称を付けた。
その愛称を呼ぶたびに、嬉しそうに笑って振り返ってくれたのが嬉しくて。

何度も呼んだ。
愛称は仲の良い証だと。


今の、自分に。




―――『ティアス』・・・」




そう呼ぶ権利は、あるのだろうか。






+ + + + +






ルックはいつも自分が立っている石版の直ぐ側でそんなティルとシーナのやりとりを見つめていた。
シーナの後ろ姿を見つめるティルの背中を見つめながら、手にしたロッドを握りしめる。

今、哀しそうな瞳でシーナを見つめるティルの側にいけないのは、罪悪感があるからか。
ティルに酷いことをしてしまったという、自覚があるからなのか。

そんなルックの視線に気付いたのか、ティルがルックの方を振り返る。
ティルはルックに何かを言おうとして口を開き、けれど何かを言う前に閉ざし、ルックから瞳を背けてしまった。
その顔には、『作った』笑顔が貼り付けられている。


―――どうして、と。
ルックは思わずにはいられない。
どうしてあんな事をしたルックに笑いかけようとするのか。
どうして笑顔で話しかけようとしてくれるのか。
どうして、自分を詰らない?怒らない?

いっそ、酷く罵られた方が―――楽になれるのに。


ティルの気持ちが、ルックにはわからない。
ティルに比べれば、シーナの方が、数倍は解りやすい。

そう考えてシーナの方に視線を向けると、シーナはビッキーと話をしていた。
その表情はティルに向けているものよりも数倍優しく、そして明るい。

そのシーナの顔を見ても、ルックはシーナがティルのことを嫌ってはいないのだと、確信を持って言える。
ティルに関して言うなら、ルックほどシーナの心境に近い者はいないだろう。
だからルックは、シーナがティルから離れていこうとした理由も知っている。



―――本当に。




・・・馬鹿じゃないの




ぽつりと小さく溢れた言葉は、誰の耳にも届くことなく消えていく。




慌ただしく階段を下りる靴音が聞こえて、全員の視線がそこに集まる。

降りてくるのは、金の輪を着けた茶色の髪を軽やかに弾ませ、赤い胴着を翻しながら、息を切らして降りてくる少年――フェイ。
その後ろから「待ってよー!」と大きな声を上げて追いかけてくるのは、桃色の胴着を着たフェイの姉――ナナミ。


その様子に、ティルは小さく微笑み、シーナは毎度のことだと呆れた顔で見つめている。
ルックは階段から転げ落ちそうになるフェイに、「馬鹿じゃないの」と零す。

何とか無事に階段を下り、弾む息を整えながら降りてくるフェイは、既に集まっている面々に向かって苦笑いを浮かべた。




「遅れて、ごめんな、さい・・・」

「お姉ちゃんは何度も起こしてあげたのにー」

「だから、ごめんって・・・」




そんな二人の会話を聞きながら、ルックはため息を一つつく。
軍主ともあろう者が、寝坊とは・・・と呆れたためのため息である。

そんなルックの隣に、影が並ぶ。
ルックの影と大して変わらない大きさの影に、ルックは一瞬瞠目し、それからゆっくりと隣に並んだ人物を見る。




「・・・・・・ティ、・・・ル・・・?」




真っ直ぐにルックを見つめてくる青灰色の瞳は間違いなくティルのもの。
まさかあんな事を強いたルックに、ティルが離れていくどころか、自ら近寄ってくるなんてことは、ルックは考えても見なかった。

けれど、ティルはそんなルックの予想を裏切って、さらにルックに近づき、思わず後ずさろうとするルックの手を取る。




「・・・っ!?」

「逃げないで」

「・・・・・・・・・何か、用?」




ルック達の方に歩いてくるフェイ達には聞こえないほど小さな声で交わされる会話。
ティルは会話をされるのに気付かれたくないのか、態とルックの身体と向かい合わせにはせず、先程まで真っ直ぐルックを見つめていた瞳さえもフェイに向けたまま話す。
それでも、ティルはルックの手を離そうとはしない。




「・・・ルックは、後悔してる?」

―――っ・・・!?」




『何を』とティルは言わなかった。
けれど、ルックにはティルが『何のこと』を言っているのかは解った。
その『何か』が解ったからこそ、ルックは言葉を失い、翡翠の瞳を見開いた。


ティルの言っていることは、間違いなく一昨日の夜のこと。
ルックがティルに強いた行為。それをルックが後悔していないかと、それを訊ねている。

そんなこと、していないはずがない。
昨日、ティルが青い顔をして部屋から飛び出していった後、どれほど自分に嫌悪したことか。

ティルのしっかり閉じられている詰め襟を見つめて、ルックは奥歯を噛みしめる。


そんなルックの耳に届いたのは、さらに予想外のティルの言葉。









「後悔なんて、しなくていいから」









思わず、ティルの言葉にルックは自分の耳を疑う。

そんなときでさえ、ティルはルックの方を見ようとしない。
まるで、それが、ティルにとってはどうでも良いことのように感じる。




「っそんなこと、出来るわけ―――

「良いんだ。僕は、・・・後悔して欲しくない」

「・・・どういう事・・・?」




する、とティルの手がルックから離される。
けれどルックはティルから離れようとはしない。

ティルはルックの上げた声に驚いてこっちに視線を向けるフェイに、何でもない、とでも言うように手を振る。
そんなティルの視線は、ナナミに叱られているフェイから、ルックへと動かされた。

ルックの瞳に映るティルの瞳は、まるでアメジスト。
さら、と揺れる横髪から覗いた右耳の緋色のピアスが凄く印象的で。









「取引を、しよう」









取引?とルックが繰り返すと、ティルはこくんと頷く。

ティルの瞳を見て、胸がざわついた。
嫌な予感が頭をよぎっていく。
なぜだか了承してはいけない気がした。
けれど、自分には既に拒否権などない。


見知らぬふりが出来るほど、ざわめきは穏やかではない。
けれど、ルックは予感なんてものは信じていない。




「僕はルックに頼みたいことがある。それが叶うまでなら、何度だって『貸して』あげる」




貸して、と言う言い方がルックは気に入らなかった。
本当に自分の身体を取引材料として使うつもりなのだろうか。
そんなティルの考え方が、ルックには解らない。




「・・・『頼みごと』?」




その他の見事の内容を、ルックは視線だけで訊ねる。
けれどティルはそんなルックに笑みを浮かべ、自分の口元に人差し指を当てる。

―――秘密。

唇の動きだけで伝えられた言葉に、ルックはしばし躊躇う。
けれど、ティルの瞳は決してルックの拒否は許さない。

ティルはルックが俯いたのをきっかけに、ルックに背を向けフェイ達の元に歩き出す。



取引の内容をルックに教えなかったのは、教えられなかったから。

取引なんて只の託け。
ティルが今、ルックに頼みたい事なんて何もないのだから。

それなのに『取引』と言う言葉を使ったのは、ルックの罪悪感を拭うため。

自分の身体を『物』の用に扱うのをルックは嫌うだろうけれど、それでもそれと引き替えにティルが何かを望むのであれば、全てとまでは行かなくても、少しぐらいはルックの罪悪感を拭える。
そう考えたからだ。


イリスが聞いたら怒るかもしれない。
只の自己満足だと。それで傷つくのはティル自身なのに、と。




―――それでも、僕は。




月を覆い隠した暗闇は、月の裏側の傷に気が付いた。
そして、にたりと笑う。


―――君はもう、独りじゃないよ、と。










もう後悔しても遅いけれど

この時の予感を、もっと信じていれば良かったのかもしれない。

それとも、君の頼みなんか、無視すれば良かったのか。




そうすれば、

全てを失うなんて事、なかったはずなのに―――――











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【dealing】・・・取引・関係



* * * * * * * 後書き * * * * * * *




なんか、凄くわかりにくい文章になっていると思います。
今回はそれぞれの心情を入れてみました。
どんどん人が変わっているのでわかりにくいですよね。

今回のモノローグの意味は、しばらくはわからないままだと思います。
解るのはきっとずっと後のことだと思います。

ティルとルックの関係が書きにくいです。
ルックがティルの存在に怯えてどうする・・・。
本当はもっと戸惑っている感を出したかったです。
あと、シーナの心情ももっと上手く。

シーナはティルが嫌いじゃないです。
そのお話はまた今度。

ああ、ネクロードが近づいてくる・・・。